ダニエルズ式によるトレーニング計画の作成
ダニエルズ式トレーニングでは、目標大会までの期間を4つの期間(フェーズ)に分けて計画を作成します。
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このダニエルズ式のトレーニング計画について紹介し、さらに具体的な例として私自身の次の大会に向けたトレーニング計画を作成してみたいと思います。
4つのトレーニングフェーズ
ダニエルズ式トレーニングには4つのトレーニングフェーズがあります。具体的な内容を下の表にまとめました。
フェーズ | 構成 | 目的 |
1 | E | 基盤の構築と怪我の予防 |
2 | E + R | スピードへの適応 |
3 | E + R + I | 有酸素性システムの刺激 |
4 | E + R + I + T | 持久力強化、閾値領域の向上 |
特徴は前のフェーズで実施したトレーニング内容に一つずつ新しい強度が加わることです。
それではそもそも各トレーニング強度ではどのような内容だったでしょうか。下の表にまとめました。
タイプ | トレーニング強度 | 練習1本の持続時間※ | 効果 | 1回の練習での走行距離上限(週間走行距離に対する割合)※※ |
|
%VO2max | 心拍数(%HRmax) | ||||
E | 59~74% | 65~78% | 30~150分 | 心筋強化、毛細血管発達 | 25~30% |
M | 75~84% | 80~89% | 40~110分 | Eと同じ+ペースに慣れる | 15~20% |
T | 83~88% | 88%~92% | 5~20分 | 持久力強化(閾値向上) | 10% |
I | 95~100% | 97.5~100% | 5分 | 有酸素性作業能向上 | 8%か10kmの短いほう |
R | 105~120% | 100% | 2分 | 無酸素性作業能向上、ランニングエコノミー向上 | 5%か8kmの短いほう |
強度としてはRepetitionが最も高い強度、Easyが最も低い強度となります。詳細はそれぞれのトレーニング強度ごとに次の記事で紹介しているので別途読んで見てください。
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強度を上げる順番の意味
さてダニエルズ式のトレーニング計画で目を引くのが、強度の高いトレーニングから先に実施していくという点。
普通に考えると、順番は低い強度の練習から初めてだんだん強度を高くしていくほうが良いように感じますよね。どうしてこのような逆の順番になっているのでしょうか。
実はダニエルズ式の考え方では低い強度から順番に強度を上げていく方法では、体への負担が大きくなってしまうと考えるのです。
どういうことか具体例で考えてみましょう。
低い強度からだんだん上げた場合
例として、最初のフェーズ1でEasyとMarathonペースで練習をして、次のフェーズ2で強度を一段上げたThresholdトレーニングを実施した場合を考えます。
このフェーズ1からフェーズ2で身体に新たに加わる刺激はどのようなものがあるでしょうか。
Thresholdトレーニングは乳酸除去能力を上げるための練習ですので、身体への刺激としては血中乳酸濃度が上がるという刺激が加わります。この刺激に対応する中で乳酸除去能力を上げていくのがThresholdトレーニングの目的でした。
しかし他に刺激が加わるのです。
Thresholdでは当然、前のEasyやMarathonトレーニングよりもスピードが上がります。つまり身体にはスピード(早い走動作)という刺激が加わります。
またさらにThresholdではEasyやMarathon以上の心肺機能への負荷がかかります。
つまりフェーズ1からフェーズ2で新しく加わる刺激という観点では、乳酸濃度上昇+スピード+心肺という3つに身体は新たに対応しなければならなくなるのです。
それではダニエルズ式のトレーニングの順番ではどうなるでしょうか。
ダニエルズ式の順番の場合
ダニエルズ式のフェーズ1からフェーズ2に移る場合を考えましょう。この場合、EasyとMarathonに新たにRepetitionを加えます。
Repetitionではスピードという刺激が加わります。この刺激に対応することで走動作を改善しランニングエコノミーを向上させるのがRepetitionの目的でした。
ではそのほかに加わる刺激は無いでしょうか。
心肺系への刺激はどうでしょうか。Repetitionの記事で書いたように、この練習では走動作を乱さないように、レスト時間をしっかりととって呼吸を完全に整うようにします。
つまり心肺系への刺激は最小限に抑えられているのです。
また乳酸の刺激はというと、疾走時間の短さによって、こちらも抑えられているのです。
つまりフェーズ2になりRepetitionを練習に加えたときの、身体への新しい刺激はスピードのみ、ということなのです。
同様にフェーズ3では心肺機能への刺激、フェーズ4では乳酸濃度の刺激、というように各フェーズでは必ず新たに一つの刺激が加わることになるのです。
各フェーズの長さ
各フェーズについてはおおよそ6週間ずつ確保します。この長い期間の中で、新たに加わった刺激に身体を対応させていくのです。
このフェーズの長さについてはある程度、個人の能力・体調に合わせて変更可能。例えば既にある程度のランニングを継続して行っている人であれば、フェーズ1については飛ばしたり、短縮したりしても問題ありません。
とはいってもあまりに短縮してしまうと、身体が新しい刺激に対応できないまま、次の新たな刺激が加えられる状況になります。こうなってしまっては、能力の向上はかえって遅くなるし、最悪故障を招いてしまいます。
各フェーズの長さを短縮することについては十分に慎重になるべきでしょう。
私の場合のフェーズ分け
次の目標については10月末を目標としています。この時期に開催される大会からしまだ大井リバティマラソンについてを暫定でターゲットとおいてみます。
大会の開催は10月29日。カレンダーウィーク(CW)という年始からの週数を数える欧州でよく使われる数え方でいうと、この日はCW43にあたります。
6週間×4つのフェーズで24週間をトレーニング期間とすると、CW20〜CW43がトレーニング期間となります。
それぞれのフェーズへの割当は以下の表のようになります。
CW | 月日 | フェーズ |
20~25 | 5月15日~6月25日 | 1 |
26~31 | 6月26日~8月6日 | 2 |
32~37 | 8月7日~9月17日 | 3 |
38~43 | 9月18日~10月29日 | 4 |
早速来週からトレーニングの開始です。フェーズ1ではEasyランを繰り返すことで、身体を走ること自体から慣らします。
フルマラソン、ヒルクライムと大会に出たあとはすっかり休んでしまっていたので、短い距離からEasyに調子を取り戻していきます。