ダニエルズ式トレーニング~VDOTとは~

ダニエルズ式トレーニングで最も重要といっていい数字がVDOTです。各ランナーが自分に合ったVDOTを用いることで、自身にとって最適な強度の練習となり、効果も最大化されるのです。

それではVDOTとはどのような数字なのでしょうか。ここではVDOTの考え方について紹介します。

1.VDOT計算機の使い方

VDOT計算機を用いることである距離でのレース結果から、自分のVDOT(=走力)を知ることができます。

VDOT計算機(https://runsmartproject.com/calculator/)

例えば私の場合、フルマラソンの経験はなく、最長で10kmレースの49分20秒という結果があります。この結果から実際に計算してみましょう。

まずレースの距離をプルダウンから選択して、タイムを入力、そして”Calculate(計算)”ボタンを押します。

すると右上のVDOT欄に数字が表示されたかと思います。これがVDOTです。

私の場合はVDOT=40.6となります。

さらに下のタグからEquivalent(等価)を選ぶことで、10km以外の予想タイムが表示されます。

私のマラソン予想タイムは3:46:55となっています。ただしこれはあくまで10kmの実力を42.195kmでも発揮できた場合という潜在能力を示したもので、実際にはフルマラソンのためには距離を踏む練習をしなければこのタイムは出せないでしょう。

ただこのタイムを出せるポテンシャルはある、ということです。

次に”Training(トレーニング)”タグを押してみましょう。ダニエルズ式トレーニングで使用する5つのトレーニングタイプのペースを知ることができます。このペースを使って練習メニューを組んでいくのです。

参考記事

ダニエルズ式トレーニングとは~概要~

2.VDOTの考え方

それではVDOTとはどのような概念なのでしょうか。

ダニエルズ博士はランナーの能力を調査する中で時間当たりの酸素摂取量(VO2max)と走行距離との間に比例関係があることを見出しました。しかしこの関係はランナーによって差があることも分かりました。例えば2人のランナーAさん、Bさんについて測定した結果は次のように異なる関係となります。

Aさん、Bさんのランニング速度と酸素摂取量の関係。Aさんは低い酸素摂取量でより高いvVO2maxを出せる(=ランニング・エコノミーが優れている)

このようにVO2maxは有酸素運動能力を評価するのにはいい指標ですが、直接ランの能力を示すものではありません。そこでVO2maxに達したときの速度(vVO2max)を指標とすることでランの実力を推定しようとしたのです。この速度を指標化したものがVDOTです。

それでは何故あらゆる距離のレースの結果からVDOTを算出できるのでしょうか。

次にダニエルズ博士らはランの時間を伸ばした時にどの程度の運動強度を維持できるかを調べました。その結果、あらゆるランナーで次の図の関係があることを見つけたのです。

ランの持続時間と発揮できる運動強度の関係

縦軸は各ランナーのVO2maxに対して、どの程度の酸素消費となっているのかを割合で示した%VO2maxです。

例えば10分間であればVO2maxの100%を出せるのに対して、120分のランではVO2maxの85%でないとランを続けられません。

先に説明した通りVO2maxとランの速度には比例関係があるので、次のように縦軸をそのままランの速度(=VDOT)に置き換えることができます。

縦軸はそのままVDOTに置き換えられる。10分程度で出せる速度が100% VDOTとなる。

たとえば10分のレースが100% VDOTであれば、120分のレースは85% VDOT、というようにあらゆる時間のレースの結果からVDOTが計算できるのです。

計算例

ここで再び私の10km=49分20秒の結果を用いて計算してみましょう。ほかの距離での予想タイムは下のようになります。

さきほどと同じグラフから49分のランの継続時間の運動強度を探すと89%VDOTとなります。

次に20分の継続時間の運動強度を見ると95%VDOTです。

つまり20分の継続時間であれば、ランの速度は49分の継続時間と比べて

(95% VDOT) / (89% VDOT) = 1.056

となり5.6%増しで走れると予想できるのです。10kmレースの平均ペースは4分54秒/キロですので、5.6%速度を上げると4分38秒/キロとなります。このペースで20分走ると4.3km走れます。計算機での予想タイムでは3mile (=4.8km)が22分58秒と予想されていますが、このペースは4分47秒ですので、ほぼこの計算で正しいことが分かりました。

このような実験データに基づいた比例関係からVDOTは計算されているのです。

3.VDOTと各トレーニングの運動強度

ダニエルズ式トレーニングの5つのトレーニングペースもVDOTを基準に設定されています。

  • Easyペース = 59~74% VDOT
  • Marathonペース = 75~84%VDOT
  • Thresholdペース = 80%台後半
  • Intervalペース = 100%VDOT
  • Repetitionペース = 105~110%VDOT

Repetitionで100%を超えているのは、100%VDOTの定義が10分程度持続可能なランの速度となっているからです。

 

以上がVDOTについての紹介でした。実際は計算機で自動で計算して使うので十分だと思います。ただ、VDOTの考え方について理解することはダニエルズ式トレーニングを理解する上で重要なポイントですので、紹介させていただきました。

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Taku
中国に駐在中のエンジニア。トライアスロンと中国語学習、最近はカメラにハマっています。
運動不足解消と体質改善のために2016年8月からランニングを始めました。過去に運動経験はなく、最初は走るだけで体調を崩すような体力のなさ。それでも練習を継続して2017年2月のフルマラソンを4時間38分で完走(個人的には偉業)。体質もすっかり改善され、ランニングの素晴らしさを実感しました。
5k 19:44|フルマラソン 3:38:06|トライアスロン(スタンダード) 2:40|中検3級|HSK5級
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