Thresholdラン(Tラン)はダニエルズ式トレーニングではトレーニングの最終フェーズで出てくるトレーニングです。Tランでは”快適なきつさ”の負荷をかけることで、長く走れるスピードの向上を狙います。
Thresholdラン(Tラン)の概要
Tランの目的
Thresholdとは日本語で閾値(しきいち、もしくはいきちと読みます)のことです。血中の乳酸濃度を走るスピードを速くしながら測定すると、あるスピードに達すると一気に上昇する点があり、この乳酸濃度のことを乳酸閾値(Lactate Threshold=LT)と呼び、閾値とはこのLTに相当します。グラフのイメージは次の通りです。
LTを超えると運動によって生じた乳酸に対して除去が追い付かなくなるために、濃度が急上昇します。その結果、LT以上のスピードでは長時間の運動は難しいのです。LTで走れる時間はおよそ60分程度です。フルマラソンのような長時間の運動ではLT以下のスピードで走ることが求められるのです。
Tランは乳酸除去能力を向上させ、LTに達するスピードを上げることが目的です。グラフでいうと曲線を右にもっていくことに相当します。
LTに達するスピードが上がることで、フルマラソンのような長時間のランニングのタイムを縮めるのです。
Tランの内容
Tランの運動強度は83~88%VO2max、心拍数は88~92%HRmaxが目安になります。
ペースはフル3時間の人はキロ3分59秒、3時間半の人は4分35秒、4時間の人で5分11秒、そして5時間の人は6分17秒です。
毎回しつこいようですが、例えばフル3時間のランナーとは、現時点での実力が3時間のランナーのことを指します。目標が3時間のランナーでは無いことに注意してください。ダニエルズ式トレーニングでは、練習ペースはすべて現時点での実力から決定されます。
また心拍数は最大心拍190の人は167~175拍、最大心拍180の人は158~166拍となります。
また主観的な強度としては”快適なきつさ”です。具体的にはそのペースを練習で30分くらい維持できそうなペースで走ります。またちゃんと調整して臨んだレースであれば、このペースを60分維持可能なペースです。
目的は先に書いたとおり、乳酸除去能力の向上です。
一回練習での走行距離の上限は週間走行距離の10%となります。
Tランの実施方法
テンポ走
テンポ走ではTペースで20分程度走ります。注意点としては強度を上げすぎないことです。強度を上げすぎると乳酸除去能力を鍛えるという当初の狙いの効果は薄れてしまいます。
あくまで”快適なきつさ”で、30分程度はそのペースは維持できるというペースで走りましょう。
私はGPSウオッチの心拍計を使ってトレーニングしていますが、このようなトレーニング時には客観的に強度が把握できてとても便利です。
クルーズインターバル
クルーズインターバルではTペースで20分よりも短い時間のランを1分程度の休憩を入れて繰り返します。
Iランの時と同様に、狙いとしては休憩をはさむことで合計の時間として20分よりも長い時間LTでの負荷を身体に与えることができます。
街中を走るときは信号待ちが避けられませんが、信号待ち時間を休憩時間と捉えて20分より長い時間のTランを実施するのもいいかもしれません。
メニュー例
ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第三版の中では週間走行距離に応じたメニュー例が載っています。その中で最も週間走行距離が短い(週64km以下)ランナー向けのメニューを参考に記載します。
- Tラン 20分 (テンポ走)
- (Tラン 5~6分、休息 1分) × 4本 (クルーズインターバル)
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